狭心症  心筋梗塞


 心臓を車に例えますと、エンジンにあたります。エンジンにガソリンを送るパイプが冠動脈(冠状動脈)ということになります。多くの人は、愛車のメンテナンスには注意を払っていて、オイル交換なども積極的に行っていますが、自分の心臓には、あまり注意を向ける人は少ないようです。心筋梗塞で入院した患者さんにお話を伺うと「思いもしなかった」という方が多いようです。心筋梗塞は日本人の三大死因のひとつで、誰にでも起こりうる病気であることをしっかり認識する必要があります。病気を知ることは、自分を心臓発作から予防したり、また不幸にして心筋梗塞にみまわれた場合にも、適切な対応を可能にしてくれます。

◆心筋梗塞と心筋症の違い
 心臓は静脈血(全身へ酸素を供給して酸素含有量が少なくなったために黒い)を吸い込み、肺へ送り込んで酸素を再び血液に取り込み、真っ赤になった動脈血を全身に送り込む筋肉からなるポンプです。安静時には1分に50〜70回の収縮と拡張を繰り返します。しかし、運動時には脈拍は跳ね上がり170回/分にもまります。それだけ多くの酸素を必要とします。心臓は全身に血液を送るだけではなく、心臓自体も多くの酸素を必要とします。心臓自身に血液を送る血管を冠動脈といいます。この冠動脈の内側が狭くなって、心臓に充分な血液を送れなくなった状態が「狭心症」と呼ばれ、運動時に胸が痛くなったり、ドキドキするといった症状が現れはじめます。冠動脈が完全に閉鎖すると、心臓に血液がいきわたらず、心臓の一部が壊死に陥ってしまいます。この状態を「心筋梗塞」と呼びます。1〜2週を亜急性、そして3週以降を陳旧性心筋梗塞といいます。

◆動脈硬化と危険因子
 それでは冠動脈が狭くなる原因はなんでしょう?
 実は血管はゴムホースとは違って3層構造になっています。この層の中にコレステロールなどが蓄積してしまい、結果として内腔が狭くなってしまうのです。正常の太さを100%としたとき、25%くらいにまで狭くなると、駆け足や階段を昇るときなど心臓がフル回転すると、心臓が必要とする血液(酸素)を十分に送れなくなります。そして、胸痛(胸部の痛み)や圧迫感などの症状が出るようになります。このまま放置するとやがて冠動脈が完全につまってしまい、心筋梗塞になります。足を止めて休むと、心臓の仕事量が減り、胸部症状が数分で消失します。裏を返せば、動脈硬化もある程度進まないと症状が出ないで潜んでいるということになり、症状がないから安心というわけではありません。