パリを歩く(実行編 その5)クリュニー美術館 南フランスのクリュニーにあったベネディクト会修道院の遺物がフランス革命後、この美術館に保管される事になったそうです。中世の美術工芸品などで、中でもタピストリーの傑作、「一角獣を配した貴婦人像」が有名との事でした。 http://www.musee-moyenage.fr/ 我々と前後して何名かの外国人が入館しましたが、外見以上に奥行きが深く、幾つも部屋があって殆どOさんと二人きりで歩いているようで心細いくらいでした。説明がフランス語なので、何が書かれているのか全く分かりません。ただ一カ所、金色の鋳造物に細かい彫刻が施されてある聖書のような書籍に英語で「注意深く頁を繰るように」という意味の事が書かれてありました。 幾つかの部屋を抜けますと廃墟のような(正に廃墟!)場所に出ました。ここは古代の冷水浴場跡だそうです。崩れ朽ちかけた土と石のドームの真ん中に立って上を仰ぐと、丸い天井が限りなく高く見え、時を超越した静寂の中に彷徨いこんだような不安で不思議な気持ちになりました。 やがて黒人の番人が二人、のんびりと話しをしている処に出ます。片言フランス語で「ウ ソルティ?」(正しくは「ウ エ ラ ソルティ?」??)と聞くと、出口を指さしてくれました。出口近くに圧倒される程に大きなタペストリーが壁面を覆っております。これが例のタペストリーに違いないと思いました。 一角獣は想像上の獣というのに部屋の片隅にそれらしい角が置かれています。リルケの「マルテの手記」の中にこのタペストリーの事が書かれて居たと言うことは帰国してから知った事でした。 「マルテの手記」より アベローネ、ここにゴブラン織りの壁掛けがある。僕は君もここに居ると想像しよう。壁掛けは六枚ある。ここへ来たまへ。一枚づづゆっくり見ていこう。しかし初めに少し退って、六枚を同時に見給へ。何という静かなつつましい感じだろう。〜後略。 まさかこんな巡り会いがあるとは・・・「マルテの手記」を読んで来なかったのはとても残念な事でした。 |
クリュニー美術館エントランス 古代の冷水浴場跡 一角獣を配した貴婦人像のタペストリー・部分 |