7日目 6月23日 ザルツブルク お城コンサート ホテルに帰り、夕食前にざっとスーツケースの整理です。いよいよ明日は帰国の途につかなくてはなりません。モーニングコールは五時半、出発は七時です。 片づけを済ませ、身支度を整えて、これで良し。修道院レストラン、「ザンクトペーター」で最後の晩餐です。レストランはまるで貸し切りです。メニューはモッツアレラとトマトの前菜、ビーフステーキ、チョコレートクヌーデル(団子)です。 ビール、ワインで乾杯。すっかり仲良しになったみなさんと和気藹々の晩餐です。やがて折角音楽の旅でご一緒になったのだから皆で歌を歌いましょうとピアノの先生がかけ声を掛けて下さって俄混声合唱団結成です。エーデルワイス、野ばらなど気持ち良く歌い、「いやぁ、流石音楽好きだけあって初めて歌ったのにぴったりだぁ」等とみんなで自画自賛♪♪ 名残は尽きず、すっかり盛り上がって何時までもこの旅の余韻に浸る私たちに「ではコンサートの時間ですからこの辺で」と添乗員さんから声が掛かりました。外に出ますと、暮れ初めた空からポツポツと雨が落ちております。 小走りに山裾のケーブルカーに駆け込み、急斜面を一気に登ります。そこからお城の石の階段を一説に依れば137段上ったとか。途中、息を整えるながら眺めた小雨に煙るザルツブルクの街の夕景は素晴らしく、無我夢中でカメラのシャッターを切りました。 ホーエンザルツブルク城は1077年に当時の司教によって要塞として建築が開始され、17世紀にようやく完成した中欧最大のお城だそうです。 正に要塞を絵に描いたようなお城で、階段の途中の石の壁には穴があいており、そこに今なお大きな大砲の筒が外に向けられているのです。歴代司教の居室や武器庫、拷問室などもあり、見学する事も出来るそうですが、我々はただひたすら階段を登って殆ど最上階のホールへやって参りました。 小さめの窓から見下ろすザルツブルクの街の景色は言わずもがな、室内もこれが中世のヨーロッパのお城というものかと思うばかりです。太い黒光りする柱や低めの天井は歴史を感じさせてくれます。舞台には電灯の燭台と大きな電気スタンドが点り、雰囲気を醸しております。 観客は我々小人数のツアーの日本人を除いては殆ど地元の方ではないかと思われました。小さな姉妹がお人形のようなドレスを着てお母さんに連れられて来て居たり、青年が一人で居たり、ドレスアップした中年のカップル、お年寄り、妙齢の女性、様々でした。 ↓シュロスコンサートのチケット やがてFestival Ensemble Salzburg による弦楽四重奏の始まりです。 曲目は HAYDN: Streichquartett (「日の出」という曲で有名なのだそうです。) MOZART: Eine kleine Nachtmusik BEETHOVEN: Streichquartett c-moll op. 18/4 です。 プログラムがドイツ語なのですんなり分かったのは、2番目の「アイネクライネ・ナハトムジーク」だけでしたが、すっかりお馴染みになったハイドンとモーツアルト、そして超有名なベートーベンです。ピーンと耳を立てて古城で聞く至福の音楽の世界に突入です。 大きな体のチェロ弾き氏の奏でる音にはうっとりです。体中がチェロになってしまっているようでした。このチェロ弾き氏もお城の石段を大きなチェロを抱えて一段一段上がってきたのです。 第一ヴァイオリン氏は確かに美しい音を奏でておりましたが、超一流のコンサートの残響が耳に残って居りましたので、バジルさんと「イマイチ、惜しい!」と共通の感想でした。 3曲目のベートーベンは最後で一番聴き応えがあり、感動致しました。小さなホールで、親しく聞くこのようなアンサンブルを家族ぐるみで気軽に聞く事が出来るザルツブルクの人々は本当に恵まれているなぁと羨ましく思いました。詳しい事はこちらのサイトにどうぞ。 とうとう、このツアー最後のコンサートも終わってしまいました。再び石段を下りエレベータで山裾へ下りて参りましたら、見上げるお城や近くの寺院はライトアップされ、小雨の中に煙っておりました。 その時不意に何種類もの大きな鐘の音が頭上から降って参りました。こんなに近くでこんなに沢山の鐘の音を聴くのは初めてです。体中を、鐘の音で洗い浄められるような思いで雨に濡れた石畳を踏みしめました。感動に震えながら歩いた夢うつつの石畳でした。 |