4日目 6月20日 グラーツ
 
 モーニングコール5時45分。
早起きしてスーツケースを整え、7時出発。バスで
グラーツへ移動です。
今日の予定はグラーツ着後、すぐ
シュテファニーホールへ向かい、ヨーロッパ管弦楽団、アーノンクール指揮のコンサートを鑑賞致します。コンサート観賞後、昼食、市内観光となります。
                     
 グラーツという地名は今回のツアーで初めて知りました。私の入っておりますコーラスの友人(つまりウイーンに詳しい友達)の息子さんがオーストリアの国立歌劇場でヴァイオリンを弾いていると聞いておりましたので、偶然コーラスの帰り道にその友人と一緒に成りました折、オーストリアに行く事を告げました。

「オーストリアは何処にいらっしゃるの?」
「あらぁ〜〜〜!グラーツ?! 家の息子、そこに住んでるのよぉ〜!!」
「オーストリアにはね、国立歌劇場がウイーンとグラーツと2つあるのよ。」
「あなた、息子に連絡しとくから、是非オパーを見せて貰いなさいよ。」
(オペラ座と言わず、オパーと言う。)
「ううん、家の息子、とーっても気さくで云えば何でもしてくれる人だから息子と思ってなんでもいってやって頂戴。」

 という具合で、アレヨアレヨという間に話しが進んでしまいました。忙しいツアーですからそんな時間が取れるかどうか、兎に角今日観光が終わった時点で「グラーツの息子Kさん」に電話して連絡を取る事になってしまいました。
                      
 グラーツは小雨が降って居りました。コンサートの会場に直行です。
シュテファニーホールは勿論ウイーンのオペラ座や楽友協会と比べますと規模は少し小さいですが、とても良い雰囲気の格調あるホールでした。また、完璧な音響を持っていることで有名なのだそうです。

ここで手荷物などをクロークに預けます。この時、うっかりカメラも預けてしまいましたので私はこのホールでは一枚も写真を撮らずじまいでした。でも、バジルさんがしっかり素敵な画像を撮っておいて下さいました。 

 ここの観客は昼間のコンサートという事も有るのかも知れませんが決して華美でもなく、かといってカジュアルでもない上品な感じでした。ウイーンでもそうでしたが、必ずと言って良いほど、車椅子の方がいらして居りました。また、杖をついたり、ご不自由そうな体の高齢のご夫婦も目立ちました。
本日のチケットには
Tripelkonzert
Sonntag,20.Juni 2004, 11Uhr
Stefaniesaal  Graz,Sparkassenplatz 1
1.Galerie links、Reihe1,Platz 8
EUR 79,00
SYTYRIARTE Die steirischen Festspiele
    
とあります。
舞台に向いて2階左側の中程から少し後ろくらいの席でした。

 指揮者のア
ーノンクールはグラーツ市庁舎前に立つ銅像、ヨハン大公の子孫に当たる貴族の末裔だそうで、登場したその姿はそう言えば毅然と胸を張り、貴公子の雰囲気を醸しておりました。このシュティリアルテ音楽祭も彼が1985年に始めたのだそうで、彼の音楽祭ともいうべきものなのだそうです。

その指揮もムーティーのあの情熱的なものとは対照的ないわば火と水のようなクールで緻密なものを感じました。彼は例えばベートーベンの音楽を演奏するならば、ベートーベンが作曲した時代の奏法に出来るだけ忠実に演奏する事をモットーとしているのだそうです。
ハイドンの時計、ベートーベンの交響曲第8番を演奏致しましたが、普通の演奏とどう違ったのか、悲しいかな私には少しも分からぬまま、ひたすら聴きほれて居りました。ツアーのお仲間のピアノの先生のお話では、楽友協会の時もそうだったけれどここでも、ピアノはヴェーゼンドルファーが使われていたそうです。

演奏が終了した時、盛大な拍手がわき起こりましたが、その後すぐ席を立つ観客が居りました。アンコールを期待したのですが、貴公子は端然とスリムな体を翻して消えて行きました。多分何時もアンコールは無いのでしょう。

ホールの前のほうの空中に沢山の小さなマイクが吊ってありました。アーノンクールは演奏会の度に録音して、その中で一番良く出来たものをCDにして売り出すのだそうです。売り上げは上々とか。これは、次の日に「友人の息子さん」のヴァイオリニストさんから伺ったお話でした。
シュティリアルテに興味のある方はこちらをどうぞ。

 午後はグラーツ市内観光です。
小雨がぱらつく中をバスで町の西の外れにあるフリードリッヒ2世の重臣エッゲンベルクが建てたという
エッゲンベルク城へ。添乗員さんがここでフランス式庭園と英国式庭園が見られると申しましたが、それは彼女の思い違いで、1625年にスペイン王宮を真似て作られた当時は綺麗な庭園があったそうですが、現在は経済的な事情で只の緑の庭に大きなクジャクが悠然とあそんでいるこれもなかなか良い風景でありました。

                            絵をクリックするとお城に近くなります。
 建物の中には入りませんでしたが、内部もとても見るべきものが沢山あるようで、例えばマリアテレジアが泊まった部屋なども見学出来るのだそうです。
第2次大戦後、ソ連軍の兵隊達がこの建物に侵入し、多くの貴重な文化財を叩き壊してしまったそうです。だから戦争は困ります!時間の関係で内部が見られなくて残念でした。

エッゲンベルク城館の森を抜けてバスに戻り、
グラーツのシンボルの時計塔のある城山へやって参りました。岩山にへばりついたような九十九折りの階段を見上げつつ、こちらは驚く程早いエレベーターで頂上へ到着です。
    上に見えるのが時計塔です。    ヨーロッパで一番赤い屋根が沢山見えるグラーツの町並み
Schlossberg と云われるとおり、昔の城塞跡でそこからは雨上がりの美しい城下町が一望出来ます。山あり川あり、おまけに遠くにアーノルド・シュワルツネッガーが建てたというスタジアムまで見えました。そう、此処は今、カリフォルニア州の知事で頑張っているシュワちゃんの故郷でもあったのです。
昔の城塞の様子

暫し眺めを楽しんだ後、再びエレベータで下山して、旧市街を散策です。
旧市街はユネスコ世界文化遺産に登録されている古い美しい町でした。旧市街の中はバスが入れませんので、徒歩です。

未亡人の館(前を通る)、市庁舎(眺める)、ヨハン大公の像のある広場(中央にあるので集合場所に便利)、州庁舎の中庭(1500年代のルネッサンス様式の建物を眺める)、武器庫(州庁舎のお隣、建物だけ眺める。でも、此処は世界最大の武器博物館だそうで・・・)、大聖堂とお隣の霊廟(ここの屋根の風見鶏はちゃんと働いており、天気予報をするのだそうです。明日は晴れと出ました。)などを見て回りました。街の様子はこちらへ。

 このあたりで大分クタビレて参りました。それがです、18時にこの近くにある
グロッケンシュピールの仕掛け時計が動くというので、ガイドさんがそれ!っとハッパを掛けるのでみんなで走り出しました。気がはやるが体が重い!しかも坂道ときています。ハーハーしながらやっとこさ何とか間に合いました。やがて仕掛け時計の等身大の民族衣装の若い男女の人形が現れてくるくる踊り始めました。
私の後ろを走って来たお仲間のピアノの先生はケタケタ笑って云いました。
「アハハ・・一生懸命老骨にむち打ってこんなもん見に走って来たわけぇ?アハハハ・・」

そのもの言いが可笑しくて私も「アハハ・・」と笑いました。
この仕掛け時計をバジルさんがちゃんと動画に納められました (^_^)v

 旧市街の散策が終わり、城壁の跡を出ますと(多分)マロニエの大木の繁る本当に気持ちの良い市立公園に出ました。こんな町に住んだら何処にも行きたく無くなるのではないかしら、と、本当にそう思うくらい、グラーツは古い町並みが美しく、落ち着いてしっとりとした所で、日本で云えば、奈良、京都に当たるような町でした。成る程、ユネスコ世界文化遺産に登録された訳が分かりました。
                         
今日のスケジュールも終わり、ホテルへ帰りますとロビーで添乗員さんに声を掛けられました。
「ファックスが届いていますよ。かっこいいですねぇ〜」
「あっ!さては友人の息子さんから!見ればこんなファックスでした。

An Frau **** Aus Japan
前略 初めまして。I・Hです。
グラーツにようこそ!
中略 
20日の夜ホテルにお着きにになりましたらお電話していただけましょうか?  略・・
21日アイゼンシュタットからお帰りになられたらばその後グラーツオパーをお見せしてグラーツのレストランにお食事なんということを思って居りますが如何でしょうか? 
略・・
・・・ひどい字で申し訳ありません。なにしろ27年日本を離れております I・H


添乗員さんにホテルの電話の使い方を教えて頂き、早速電話を。
声量のあるテキパキとした「グラーツの息子」Iさんの声が「やー」と聞こえて参りました。